第428回  昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語。】

第427話  生徒採用予定者着校の心得の事。      2013年4月24日水曜日の投稿です。
 
 
    
 
 
   セミか、「みんみんみんみーーーーーーー。」と鳴く、熱い7月の午後、 私たちは指定されていた
 
 宿舎に暑い中、歩いて戻ったのであった。
 
 
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    三谷家につくなり、三谷の老婆が、「今日は、あんたらーーはやかったね。」と、言うので、
 
   私が。「 一応、生徒採用通知という物をいただきまして、やっと帰ってきました。」と言うと、
 
   三谷の老婆が、「 ほうねーーー、そりゃーーえかったがーーー。」と、喜んでくれたのであった。
 
   
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          広間に上がり込んで、考えていたのであるが、これから小用の港に行っても、
 
        おそらく、生徒がたくさんつめかけているので、船に乗るのが、順番待ちで、
 
        夕方に出ると、河原石港について、呉駅に出て、広島に着いた段階で、夜になってしまう、
 
        宿屋があいていればよいが、はて、どうしたものかと、考えていたら、三谷老婆が、
 
        「井戸水で、ひやしといたんよ。」と言って、スイカを切って持って来てくれたのであった。
 
 
        「我が家にとまってくれた生徒さんが、不合格になる事もなく、みんな、合格してくれて、
 
         あたしゃーー、よかったわーーー、やれやれじゃわーー、仏壇に礼をいうてこようー。」
 
         と、言うので、「 おばさん、心配かけたなーーー。」と、今川君が、ニコニコしながら
 
         三谷老婆に、礼を言っていたようであった。
 
 
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        みんな喜んで、いただいたのであったが、結局、この三谷家に、一泊して、翌日の早朝に
 
        小用の港を出ることにして、私は、兵学校でいただいた書類を広げてみたのであった。
 
        「 海軍兵学校採用予定者の心得、」
 
        イ、 被服類は官給し、私物は一切使用禁止とする。
 
        と、あり、 「ほうーー、ふんどしも、学校で用意してくれるんかいなーーー  。」と、独り言を
 
        いいながら、次を見ると、ロ、文房具、日用品類は、官給する。と、ある。
 
        ハ、 食事は保険上十分な食物を官給する。とある、「 ほうーーー、わてらは、もう、一生
 
        食べ物には、困らんわけや。」と、 またまた、独り言をいいながら、書類に目を通したの
 
        であった。
 
        二、 休日、外出の時以外は、随意の飲食は許可しない。
 
 
         「と、言うことは、なんやーー、おやつなんか、食べられへん言うことかいな。」と言いながら
 
       、次を見ると、ホ、 各家庭より、菓子その他の食物を送る事は厳禁する。とある。
 
        へ、  女性と交わりを深くして、本務を忘れ道を誤った者は、生徒を免ずる。とある。
 
        「 今後、女人には、用心せんとあかんなーー。」と、独り言を言っていたら、
 
        三谷の老婆が、 「淵田君、さっきから、何をひとりごとよーーるんね、その紙にゃーー
      
        どういうて、書いてあるんね、うちは、眼がうすーーなって、よう見えんのんよ。」と、言うので
 
        「  まあーー、海軍兵学校に入学する人の、心得が書いてあるんや。」と言って、
 
        三谷老婆に、読んで、聞かせたのが、記憶に残っている。
 
 
 
【次回に続く。】