第455回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第454話 源田實の下宿先の事。 2013年5月21日 火曜日の投稿です。
もうひとりの主人公の源田實は、一度、加計の家に帰省して、家族、親族に、
海軍兵学校の合格内定を報告して、ゆるりと、くつろいだ、盆休みを過ごし、兄の
松三【のちの大蔵官僚】と一緒に、再び、広島に出てきて、広島駅のホームで、
東京帝大にもどる、兄の源田松三を、広島駅で、見送ったのであった。
【大正時代の広島駅 駅舎 】
兄の源田松三は、東京の中央官庁に、進むのを目指していて、帝大で、勉強
に力を入れているのであるが、「 實、 世の中は、お金、経済で、進んでで行く、
役所の予算を握る者が、政治を動かしていくんだ。」と、言って、 海軍や、陸軍に
は、興味が無く、のちに、大蔵省に入って、 戦中、戦後、活躍するのであるが、
これは、後日の話である。
広島駅から、下宿のある、原酒造まで、残暑の厳しい、広島市内を徒歩で歩き、
下宿から、少し離れた、原酒造では、当時珍しい、ガソリンエンジンのトラックが、
列を作っていたのです。
広島の第五師団に納める、お酒の積み出しらしい。
その当時の軍隊というのは、地域経済の牽引車的な感じの組織で、 毎日消費
していく 食料、その他の諸品の購入で、周辺経済は、ずいぶんと潤っていたのです。
近くに行ってみると、下宿先のおじさん達が、酒樽を積み込んで、「 やれやれじゃ
のう、やっとおわったわーー、 まあーー、前は、大八車でお城にはこびょうたがー、
便利な、ガソリントラックいうもんが出来たけーー、ぼれぃ、楽になったわーー。」
と、額の汗をふいているところであった。
「 おじさん、 加計から、もどつてきたけーー。」と、声をかけると、「 おうー實君、
今積み込みがおわったとこよーー、腰がいとーなったわーー。」というので、
「 ガソリントラック、すげーーがーー。」と言うと、 おじさんが、「陸軍いうところには
金がぎょうさんあるんじゃのう、 うちにも、1台ありゃーー、ぶち、楽ができるんじゃ
が。」と、 つぶやき、 その後、日本にガソリン車は、ドンドンと生産、購入されて
いき、日本には、なくてはならない物になっていくのです。
当然、油がないと動かないので、 石油の輸入が増大していき、 その石油の輸入
は、20年後、 大東亜戦争の原因になっていくのです。
【次回に続く。】