第493回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第492話 海軍兵学校入学式準備の事。 2013年6月28日 金曜日の投稿です。
起床ラッパとともに、私達は、寝台を、整頓して、整列し、点呼を行った後、 分隊でまとまって、
早朝の、練兵場にどっと、繰り出したのであった。
今日は、体操中の巡検に引っかからないように、寝台を、2号生徒の指導で、折り目をつけて、
整頓して、練兵場に出たのであった。
ラッパの合図で、早朝の0520時、500名近い人間が、階段につめよせるので、
外に出るのも、大変である。
私達は、整列すると、まずは、大正天皇陛下のおあす、皇居の東側に向かって、一礼し、
次に、父母のいる、東側に深々と一礼して、 散開して、上半身を裸になって、
「 ビィ-、ピィー。」という、 独特の笛の音に合わせて、海軍体操をするのである。
見回りの監事附の下士官から、「 貴様、なんだ、その体操は。」と、
井上武男君が、指導され、 後で大変な事になるのであるが、
水戸中学の井上君、朝が苦手で、さらに、分隊伍長に、早朝4時にたたき起こされて、
思考能力0の状態で、 きびきびと、体操をしていなかったらしい。
斜め端の方を見ると、 侍従のような人と一緒に、高松宮殿下が、海軍体操を
されていて、私は、皇族と一緒に、海軍体操が出来るとは、こんな良いことはないと、
一人で、体操をしながら喜んでいたのであった。
「 ピィーーーーー。」と、笛が鳴って、私達は、朝礼台の前に、集合したのであった。
すると、副校長の大佐殿が壇上に上がられて、「 敬礼ーー。」の号令がかかり、
私達は、覚えたての敬礼をすると、 「 本日は、第52期 海軍兵学校の
入学式がある。 時間は、0945時に、大講堂に整列後、 1000時に、
一般の来賓もお迎えして、執り行われる予定である。
各自、各員は、よく考えて、粗相のないように、行動せよ。
各分隊監事は、 各伍長に指示を出して、 毎年のことであるが、入学式に臨む、
新入生の3号生徒の服装、及び、その他の事については、十分指導を行い、
落ち度のないようにせよ。 又、一般の来訪者の父兄から、折り箱などの食事のたぐい、
菓子類、私物の受領は、すでに、父兄には、案内を送付済みであるが、生徒が受領
する事は、硬く禁止する。 以上 終わり。」と、訓示があり、
私は、ぼやーーーと、して聞いていたのであるが、この後、服装の指導があるとは、
またまた、面倒なこっちゃ、と、内心、心配になったのであった。
【次回に続く。】