第555回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第554話  温習室での修正の事。           2013年8月29日 木曜日の投稿です。
 
 
 
 
   私達は、1830時から、第13分隊の温習室という部屋に行き、その日の授業の復習を、
 
行う予定であったのであったが、 1号生徒の伍長補【当時の副分隊長】の鈴木末七生徒に、
 
呼び出されて、温習室の後に整列させられたのであった。
 
 
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   伍長補殿は、 「本日、分隊監事【海軍大尉】殿に呼出を受け、 午前中と、午後の授業を
 
   我が13分隊の3号生徒が、不名誉な事に、起立させられたまま、授業を受けたというのは
 
   本当か。」と、 問ただされたのであった。
 
   私は、横をちらりと見て、 一歩前に出て、「 淵田 美津雄であります。 てんまつを申告い
 
   たします。  実は、 その通りでありまして、授業の始まりの時に、かしこくも、天皇陛下
 
   教科書の配布がありまして、教官の許可が出ないうちに、自分が教科書を開けまして、手信号
 
   の表の画を見て、まねをしていて教官殿に、指導を受けたのであります。 」と、申告すると、
 
 
    「淵田生徒、 貴様は、この3号生徒の中で、1番の年長者で、先任の順序も、福元生徒に
 
    ついで、2番目である、 全体のたらない部分を、補う立場でありながら、そのような失態を
 
    おこして、第13分隊の看板にドロを塗る行為をするとは何事か。」と、随分と大きな声で、
 
    指導を受けたのであった。
 
    伍長補殿は、「 午後からは、何があったのか。」と、問いただしがあり、「 となりの後任の
 
    井上生徒が、授業中、おそれおおくも、居眠りをしていて、分隊監事附きの下士官に発見され
 
    まして。」と、私が申告すると、 伍長補殿の顔は、 真っ赤にはれ上がり、「 井上ーーー
 
    貴様、何事であるかーーばかもん。」と、 怒鳴り声で、私達は、大目玉を食らったのであった。
 
    前の方の席の、ひとつ学年の上の私と同い年の先輩方の2号生徒は、「 やれやれ、やらか
 
    してくれた。」と、そんな顔をして、静かに前を向いていたのを記憶している。
 
 
 
 
【次回に続く。】