第574回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第573話 試衛館の三段突きの事。          2013年9月17日 火曜日の投稿です。
 
 
 
 
 
   源田 【後の空将、参議院議員】は、 正眼から、体を沈めて、左足を右足の中程まで、前に
 
進めて、その左足をバネに、 中山博道先生の顔面めがけて、木剣を突いて行ったかと思うと、 
 
手元を引いて、 さらに二度目の突きを、中山博道先生の胸元に、突いて行き、 そして、腕を縮めて、
 
三度目の突きを、 下腹に向かって、突いて行ったのでした。
 
 
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    中山博道先生は、 すり足の足さばきで、すう、すう、すうと、源田突きを、体をかわして、
 
    最後の突きで、源田の右手が伸びきった、その一瞬に、 刃を上にして、みね地を下にして、
 
    源田の木剣の切っ先のみね地をこするようにして、すべらせて、 手元の革鍔を、たたくと、
 
    「ぱーーん。」と音がして、 源田の木剣が、道場の床に落ちて、 ゴロゴロと数メートル、
 
    転がったのでした。
 
    海軍兵学校の武徳殿の中は、「 ほおーーーーーーーーーぅ。」と、どよめきが、響いたのです。
 
    「 君、すまんが、木剣を拾いなさい。」と、指示を出すと、 また、源田は正眼に構えなお
 
    したのです。
 
 
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        中山博道先生は、「 諸君、日本の刀剣というのは、支那の重さで、たたき斬る
 
     青竜刀と違って、 用い方によって、いろんな技が出来るのである。
 
     もう一度、見せるので、よく見ておくように。」と、言うと、 「 きみ、 もう少し前へ。」
 
      と、源田に指示を出して、源田の木剣の上を、木剣のみね部で、すべらせて、くるっと、
 
     右手首で、ひねるように、 すべらせて、鍔の部分を、パンっ と、スナップをきかせて、
 
     強打するわけです。  すると、 木剣が、手から飛んで落ちてしまうのです。
 
      みんな、見学している、教官、生徒ともに、「 はぁーーーーーーーっ。」と、 感心して
 
     見入ったのでした。
 
 
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     すこし、覚えるのにコツがあるのですが、 杖道の 神道夢想流の太刀落としの、脇構え
 
     からの、杖による、袈裟に振りかぶって、打ち込む技の応用なのですが、みなさんも、1度、
 
     実際に試してみていただけたらと思います。 
 
 
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  中山博道先生は、源田に、「 君は、試衛館の天然理心流の三段突きを、誰に教わった
 
  のかね。」と、問われたのですが、
 
 
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                       【 伝 新撰組 沖田総司 古写真】
 
 
 
      源田は、 「幕末の新撰組 沖田総司の伝記を読んで、初めは木銃で、練習したので
 
      あります。 1秒程度で、3回突いて、 必ず倒す、必殺の技のようで、 自分は、3秒
 
      程度、まだかかるのであります。」と、返答をすると。
 
 
      中山博道先生は、 「 随分と、出来の良い突きであった、 伝記を読んで、自ら工夫
 
      するとは、見事である。 東京に来たら、神田の有信館に、私を訪ねてきなさい。」
 
       と、みんなの前で、源田を褒め称えたので、 このときから、源田は、海軍兵学校で、
 
      知らない人がいないくらい、有名な生徒になったのでした。
 
      見学されていた、 高松宮殿下も、源田の事を、感心してご覧になられていたようで、
 
      何をやっても、 当時から、よく目だって、 出来の良い生徒だったのです。
 
      1歳年上の私はどうかというと、後の隅の方で、 大きな目を開いて、同期の生徒と、
 
      眺めているのがやっとだったのでした。
 
      「 わいも、がんばらんとあかん。」 そう、心の中では思っていたのです。
 
 
【次回に続く。】