第585回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第584話  海軍兵学校 射撃教練の事。       2013年9月27日土曜日の投稿です。
 
 
 
 
 
 
 
 
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    教官が、 「 射撃よーーーい。」 と、号令を、大声で出しますと、 伏せ撃ち姿の、生徒の
 
後の、 生徒が、準備よしという意味合いの、 赤い籏を水平にあげまして、教官が、確認しまして、
 
赤い籏を振り下ろしながら、「 撃てーーーぃ。」と、 叫ぶと、一斉に、乾いた様な音で、
 
「 パカッーーン。」 と、音が上がりまして、 白い煙が、瀬戸内の潮風に、流されて行きました。
 
 
 
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       すると、今度は、赤い籏を、白い籏にかえまして、 教官が、「 次弾装填。」と、大きな、
 
      声で、号令をかけたのでした。
 
 
 
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        すると、急いで、ゆうていを動かしまして、 「じゃきん。」と、音がして、次弾を、
 
        薬室の中に、入れるわけです。
 
        そして、 射撃準備が整いますと、「 次弾装填よし。」と、大声で叫びますと、
 
        白旗から、 赤旗に変わりまして、 じいっと、静かに、狙いを定めて、待つわけです。
 
 
  
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    そして教官が、赤い旗を上がるのを確認して、 「 射撃よーーい。」と、叫んで。赤い旗を
 
    下におろしながら、 「うてーーーーぃ。」と、号令すると、 乾いた音で、「 パカッーーン。」 
 
     と、ほぼ同時に、発射音がして、 風で白い煙が、すーーーうっと、 流れていくのです。
 
 
     私達は、小銃を、肩にかけて、耳を両手でふさいぎまして、 見学していたのです。
 
     「 早く、わてらの番が、こんかいな。」と、  そわそわしながら見ていたのです。
 
 
 
    
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  随分、こんな感じで、射撃教練が進んでいきまして、教官は、のどが、疲れたのか、監事附の
 
下士官に、射撃指揮官を変わりまして、 伏せている生徒の、足のかがとのくるぶしが、地面に
 
 つかず、かがとが浮いている生徒を、 足の先で、注意しながら、 歩いて指導されていました。
 
 
 
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        そして、いよいよ、私達の第13分隊の順番になったのでした。
 
        なにしろ、初めてな物で、 随分と、みんなそわそわしたものでした。
 
 
 
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     監事附殿が、「 第13分隊 前へーーーっ。」と、 号令をされますと、私達は、まず、自分が
 
     射撃する、的を貼りに行くのです。
 
 
 
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       皇国山の山麓の射撃教練場は、一面草原の原っぱなのですが、 少し歩きますと、
 
 
 
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    崖というか、 斜面がありまして、手前に、木で作られました、 的を貼り付ける場所が、
 
    あるのです。
 
 
 
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                      そこに、自分が撃ちます、的を貼るわけです。
 
            1番外枠は、70センチ程度ありまして、  随分と大きな的でした。
 
 
 
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    みなさん、大正時代の当時の指導は、上の写真の様に、つま先が下で、かがとが、上ですと、
 
    敵の弾で、かがとを負傷する確率が多いと言う事で、 やかましく、かがとのくるぶしを、横に
 
    して、つま先は、左右に外側の横にハの字にするように、指導されました。
 
    上の画像などは、「 貴様ら、全員失格、足首が、貫通銃創で、全員負傷 。」と、こうなってしまう
 
    のです。
 
 
 
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     色々と、射撃姿勢の指導を、教官、監事附の下士官殿から指導を受けまして、
 
     小銃を構えるのですが、  大きいはずの的が、遠く離れますと、小さく見えるのです。
 
 
 
 
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     射撃と、視力の関係は、 当時は、視力の悪い生徒は、よい生徒と比べて、射撃の
 
成績がよくなかったと思います。
 
  私などは、 視力検査を、以前紹介しましたが、暗記して、すり抜けて入学していましたので、
 
すこし、ぼやけるのでした。
 
  そういうわけて、 黒い大きな○は、見えるので、●の下に、照準を合わすのです。
 
 
 
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       なぜかと言いますと、 随分堅固に、小銃を保持していましても、反動で、すこし、銃身
 
        が浮くのです。
 
        そこで、少し下を狙いまして、射撃の反動で、上に上がって、ちょうど良い場所に
 
        狙いを定めるわけです。
 
       下士官殿の号令で、「 弾薬装填。」と、号令がかかりますと、まず、弾盒から、5発1連の
 
 
 
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        小銃弾を取り出しまして、ゆうていを、「じゃきん。」と引きまして、 上から押さえる
 
     ように、右親指で押さえるわけです。
 
 
 
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        「 がちゃがちゃがちゃ。」と、小銃弾が入って行くわけです。 ここで、弾板を
 
        なくさないように、拾いまして、 弾盒の中にいれまして、 ゆうていを前に戻すのです。
 
        すると、「 じゃきーーん。」と、音がして、小銃弾が、薬質に入るわけです。
 
 
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         私は、「 これでよしや。 いよいよやで。」と、菊の紋章を見まして、構えたのです。
 
 
 
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       私は、「 淵田生徒、 弾薬装填よし。」と叫んで、 息を一杯すいこんで、すうーーーと
 
       吐いて、 息を止めて、 引き金を指で、徐々にしぼっていくのです。
 
 
 
       ここが、みなさん肝心なところでして、 すぐ、引き金を、「グイッ。」と、引いてしまい
 
       ますと、バネの振動で、銃身が微妙に動いて、弾がそれるのです。
 
 
 
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       これは、小銃、拳銃とも、同様な事でして、 みなさんが海外などで、撃たれるときは、
 
       心の隅に、このお話を置いて、引き金を引いていただけたらと思います。
 
 
 
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          それから、上の彼らのように、片眼をつむるのも、初心者の証拠で、両目をあけて、
 
          射撃しなくてはだめです、理由は、 視野が狭くなるからです。
 
           私は、尋常小学校から、中学まで、奈良の38連隊の陸軍の人に色々と軍事
 
          教練を受けていたおかげで、海軍兵学校の授業で、随分と役に立ったのです。
 
 
  
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          そして、引き金をしぼって、両目をあけて、静かに命令を待って、「 撃てーーぃ。」
 
           と、耳に号令が入りますと、引き金を引いたのです。 
 
          すると、 「パカーーーン。」と、 乾いた音がしまして、 視力のよい生徒ですと、
 
          的に穴が開くのが、見えるのですが、残念な事に、私には見えないのです。
 
          視力が、悪いのが悟られないように、 涼しい顔をして、 次の動作に入りました。
 
 
 
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          10発なんて、あっという間で、撃った気がしませんでした。
 
         30年式小銃は、銃身が長いのと、小口径の小銃弾で、 小銃の重量があるので、
 
         おおきな、反動もなく、 なかなか、撃ちやすい小銃でしたが、 担いで歩くのは、
 
         そうでもないのですが、 小走りにマラソンのように、 駆け足で行軍訓練する
 
         時は、随分と大変な思いをいたしました。
 
         その日は、生まれて初めての実弾射撃で、 昨日のことのように、覚えています。
  
 
 
 
  【次回に続く。】