第697回 昭和の伝道師【戦中戦後のパイロットの物語】
第696話 アメリカのフォックス社の噂の事。 2014年1月18日 土曜日の投稿です。
大正10年10月15日だったと思いますが、 その日は土曜日でして、 以前紹介したように
毎週土曜日は、校内一斉清掃をする曜日でして、授業がある日もあるのですが、掃除の日という
のが、通常のだったのです。
そして、日曜日は、江田内の指定の生徒倶楽部で、みんなで将棋などをして、
遊ぼうと思っていたのですが、 その考えを打ち砕かれてしまったのです。
朝の生徒隊監事殿のお話では、来週の水曜日に、アメリカのフォックス社の活動
写真が来るので、見苦しいことにならぬよう、校内を本日清掃し、翌日の日曜日は、
休日返上で、午前中から、人員調査を行うと、訓示があったのです。
人員調査とは、 身辺持ち物検査のような物で、 ずいぶんやっかいなのです。
分隊伍長殿からの命令で、小銃掛けなどの清掃をすることになったのでした。
実は、昨日の夕食時より、なにも食べていないので、お腹がすいて、仕方がなく、
みんな、朝方、空腹で、早く朝食の時間に、ならないかと、そんなことばかり考えて
いたのです。
となりの、後任の井上武男生徒が、「 しかし、おかしな、名前だっぺや。」と、話しかける
ので、「なんでやねん。」と、 聞き返すと、「 フォオックス社言うたら、和訳すると、狐の
会社いうことだっぺ。」と、言うので、 「 ほんまやなーー。」と、 こんな会話をしていたのです。
「あーーーー、ワイは、明日、休日を、生徒倶楽部で、気ままに昼寝でもと
考えとったんやが、 人員検査とは、気が重いわーー。」と、 こんなことを言うと、
となりの、先任の、福本義則生徒が、「 ほんまでごあす。」と、ため息をつくので、
小銃の手入れが、なかなか、身が入らなかったのでした。
私達は、銃掛に、小銃殿を、きれいに並べて、ホコリをきれいにしまして、
次は、分隊温習室に、清掃に移動したのでした。
この早く、食事をしたい、 早く時間が来ないかと、 そんなことばかり考えていたので、
何事も、身が入らなかったのです。
これらの、いい加減な気持ちによる作業は、後に、私達に災いとなって
ブーメランのように、戻ってくるのでした。
【次回に続く。】