第705回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第704話
 
海軍兵学校 高松宮殿下専用船の初加勢【はつかぜ】の事。


                        2014年1月26日日曜日の投稿です。
 
 
 
 
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   海軍兵学校の北側には、入り江がありまして、普段は、どう言いますか、

練兵場のある方から、みくに山 【現在の古鷹山】をバックに、写真を撮影する

ことが多いので、あまり知られていないのですが、ここの入り江に、高松宮殿下

専用の、御用船が当時あったのです。
 
 
 
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                 【  高松宮殿下の 初加勢 号 】
 
 
 殿下は、この船が随分と気に入られていたようで、宮内庁から海軍省に移管され、
 
運営管理は海軍兵学校で行われ、 一般生徒、教官といえども、校長の千坂閣下

の許可が無いと、乗船できない船であったのです。
 
 大正10年2月5日 土曜日、この日は、海軍兵学校は、いつも通り校内一斉清掃
 
の日であったのですが、 兵学校の教頭兼、監事長の長澤 直太郎海軍大佐が、
 
【海兵26期、 岩手県出身 後の海軍中将】 高松宮殿下をお誘いして、 江田島
 
対岸の西能美島に狩りに、お誘いしたようです。
 
 
 
 
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射撃好きの高松の宮殿下は、「 長澤、ぜひ、行きたい。」と、かっけで脚が腫れて
 
いたようですが、おそばの軍医の西村文雄二等軍医に、「 西村、おまえも同行せ

よ。」と命令を出して、 御用船  初加勢 【はつかぜ】に、乗船され、中村の港に
 
上陸されたのです。
 
その日は、記録によりますと、冬場ですが、良いお天気であったらしく、 狩り場の
 
案内人は、 海軍兵学校監事の入船 直三郎海軍大尉 【海兵39期 後の海軍

中将 香川県出身 】 が務めたようです。
 
当時、かっけという、病は、死に至る人も多く、 原因不明の病気で、昭和になって、
 
食事が原因であるとわかったようですが、 気晴らしに教頭先生がお誘いしたよう

です。
 
当時の狩猟用の猟銃は、旧式の18年式の村田銃や、30年式歩兵銃のだったよう

です。
 
 
 
 
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当日の猟果は、 9羽程度であったようですが、 高松宮殿下は、野ウサギを1羽
 
仕留められたようで、随分とご機嫌が良かったようです。
 
問題は、夕方、初加勢 に乗って、江田島に帰ってから、事件が起きたのでした。
 
目撃者の話によると、 「 キャィーーーーン、キャィーーーィン。」という、鳴き声が

したので高松宮御殿に駆けつけたところ、 殿下の愛犬のメス犬のドワーが、複数

の野良犬にかみつかれまして、大けがをするという事件が発生したのでした。
 
 
 
 
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「 御姫様、 強襲される。」という、ニュースは、またたくまに、兵学校の中に伝わ

りまして、生徒が、木銃やら、ほうきやら、色々持って、 野良犬の討伐に出たよう

ですが、一目散に逃げ去り、 取り逃がしたようです。 
 
御姫様は、ずいぶん切り傷を負われて、海軍兵学校の医務室に担ぎ込まれ、手当を
 
受けたようですが、 百生 豊市 看護長に6針も縫っていただいて止血したようで、
 
大変な重傷であったようです。
 
高松宮殿下が、長澤 教頭と、一緒にお帰りになって、「 ドワー 大丈夫であるか。」
 
と、心配されたようで、 当時は大変な出来事であったのです。
 
 
【次回に続く。】