第798回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第797回 海軍兵学校、手旗信号考査の事。 2014年4月29日 火曜日の投稿です。
私達の乗りましたランチは、するすると江田内の海に出て行きまして、寒風を受けて
帆が、 パタン と、良く張りまして、気持ちがよいように進んでいったのです。
帆船というのは、 後から風を受ける場合は、 そのまま帆を張っていけばよいのですが、
そうでない場合は、 ランチをジグザグに、斜めに持っていきまして、風を上手に受けては、
舵を切りまして、 帆を張る位置を、 左弦から、右舷に、右舷から、左弦に、 帆を張る、
兵も、上手にン服しないように移動する必要があります。
この、帆の張り方、扱い方が、非常に難しいわけでして、 訓練が必要なわけです。
良く映画などでは、 オールでこいでいるシーンが多いのですが、 こう言う、自然を
知ると言いますか、 風を利用しての、ランチの運用術というのは、当時は、ずいぶんと
訓練させられました。
これを覚えておきますと、 艦船の大小を問わず、 風の受け方、 帆の張り方は
共通でありまして、 まっ、もっとも、 大きな帆船になりますと、 帆の運用が
複雑になっていくのですが、 当時は、 風の受けが良かったと言いますか、私達の
分隊のランチは、 監事附殿が指定する場所に到達し、停船したのでありました。
まずは、先任の福元 義則生徒が、「 ワレ、シテイバショニ、トウタツス。」
と、手旗信号を送るわけです。
手旗信号というのは、以前紹介しましたが、 赤い旗、 白い旗をもちまして、
いろんなポーズに、 意味合いがあって、それをだだただ、暗記して、言葉で
しゃべるように、 体を使って、訓練するわけです。
ランチの上で、対岸の監事附に対して、 手旗信号を送るわけです。
考査の問題というのは、実は簡単でして、 前の人を見ていると、問題がわかるので
事前に、準備して、 わからない時は、 「 おい、み とは、どないするんや。」と、
聞けたので、 ハンモックナンバーの数が多い生徒になるほど、後になるので、
良かったのです。
1番はじめは、 福元 義則生徒でして、 対岸から、 監事附殿が、手旗信号で、
「 キサマノ、シュッシンケント セイメイシンコクヲセヨ。」 と、 こういう感じに、
信号を送ってきます。
すると、ゆらゆら揺れる、ランチの上から、両足を踏ん張って、赤と白の旗を
振りまして、「 ワレ、カゴシマケン シュツシン フクモト ヨシノリ 。」と、返信する
わけです。
今度は、私の番になりまして、対岸で監事附殿が、同様の信号を送るわけです。
「 ワレ、ナラケンシュツシン フチタ ミツオ 。」と、こう送りますと、
「 ワレ ドウサガ、ハヤスギテ、ヨミトレズ、 サイド、 ソウシンセヨ。」と、
こうなりますと、減点になるのです。
あせって、速く動作をしますと、 読み取りずらいので、 ある程度の、読み取り
やすい、はやさというか、 遅いのも良くないのですが、 速すぎるのも良くない
のです。
次は、井上 武男 生徒の番になり、「 ワレ、 イバラキ゜ケン シュッシン
イノウエ タケオ 。」と、 こんな感じで、手旗信号の考査は、順調にすぎて
いったのでありました。
【次回に続く。】