第859回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第858話 海軍兵学校 上官にお仕えする心がけの事。 2014年6月29日日曜日の投稿です。
私が、糖尿病が悪化して、失明する以前の事、 時代劇で、藤田まことさんの時代劇を
時たま、視聴していた時期があるのですが、 そこで、町奉行所の同心の詰め所で、
上司の口うるさい、与力にいろいろ言われるシーンがありますが、 以前の私と重なり
あわせて、 気の毒に感じて見ていたのです。
私は、振り出しは、海軍兵学校から、 練習航海を経て、艦艇の甲板士官として
配属され、 ここでも、海軍大尉殿に、やかましく指導され、いやな思いをするの
ですが、 世の中、いろんな人、 上官であったり、 部下であったりするのですが、
必ず大勢の中に、だれかがいるわけです。
途中から、あることを心がけるようにいたしますと、 上官との関係が、スムーズ
に行きまして、 ずいぶんと、自分のためになったのです。
【 大正13年当時の、海軍少尉候補生時代の主人公 23才頃 】
何事も積極的に、すこし、生意気な発言を若いのですることもあったのですが、
上官から、 親切にしていただいたのです。
【 昭和19年頃の主人公 右端、 中央、豊田連合艦隊司令長官 】
豊田 副武 聯合艦隊司令長官に お仕えした時も、 その心がけで、お仕えした
のですが、 その心がけを、 大正11年当時、井上 武男 生徒に、洗濯をしな
がらお話をしたのでした。
それは、「 お仕えする人の身になって、考えて、事前に行動する。」と言う事で
ありました。
ありました。
その末端の組織の一人となった場合、 仕事の一部分しか理解しないまま、
下士官の上役として、 配属されると、「 淵田少尉殿、 これはどうするので
ありましょうか。」などと、 知っているくせに、聞いてくるわけです。
わからないので、 上の将校に聞きに行くと、 いらいらした顔で、ガミガミ言われる
わけです。
上の人からすると、 ささいな、くだらない事をいちいち聞いてくるので、どうしても
そうなるわけでして、 問い合わせてきた、下士官連中、その下の水兵達は、それを
見て、おもしろおかしく喜ぶようなしぐさをして、 物笑いになるわけです。
これを上手に出来ない人は、仕事が勤まらないわけです。
今回の井上 武男生徒の場合は、 同じ分隊の45人の中の一人の人とのトラブル
ですが、その人が、何を考えられているか、 その人の顔色を自分の為にうかがい、
どうしたらその人が満足するか、 先をよく考えて、行動するようにすると良いとお話し
したのです。
例えば、「 よーーし、井上のやつに洗濯をさせよう。」と、考えていたと思ったら、 先に
こちらから申し出て、言われる前にやってしまうわけです。
すると、「 おーーう、 井上生徒、ご苦労である。」となるのですが、 反対に、 「 井上、
洗濯してこい。」と、言われて、嫌々、変な顔をして受け取って、先輩生徒の下着を洗濯するより、
ずいぶんと、自分のために良いわけです。
「 えーーーーーっ、 いやだっぺ、 またか。」と言うような、顔で、
洗濯物を受け取ると、 「 貴様は、心がこもっておらん。」と、なんども
なんども、繰り返し、嫌がらせのように、やらされるはめに陥るわけです。
そのようなお話を、久しぶりに、井上 武男生徒と会って、 寒い中、こごえながら
語り合ったのでした。
大正11年の1月、 江田島は、雪はなかったのですが、随分冷たい風が
吹いておりました。
【次回に続く。】