第909回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第908話  海軍兵学校 江田島のめばるの話。   2014年8月18日 月曜日の投稿です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
      
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    大正11年の4月16日の日曜日 私達は、食事というのは、炊事の小僧に、前日、にぎりめし
 
  を作ってもらい、 それを持参して、それで済ませるのがほとんどでありました。
 
  生徒倶楽部では、 お茶、菓子程度だったのですが、 記憶によると、 倶楽部のおじさんだったか
 
  ご近所だったか、 記憶が薄いのですが、 当時、江田島では、4月に入りますと、めばる と
 
  言う魚が釣れ出すのだそうです。
 
  聞いた話では、 岩場や、藻場の中に潜んでいる、そんな魚だそうですが、私は、奈良の山村
 
  育ちで、 海の事は当時はよく知らなかったのです。
 
 
 
 
 
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       誰が 魚を採られたかは、知らないのですが、 生徒倶楽部の川口のおばさんが、
 
      「 みなさん、 メバルの生きのよいのが、入りましたから、お昼に少し、作ってあげま
 
       しょうね、 刺身でもえーーんじゃが、 煮付けにしたら、なかなかおいしいけぇ。」と、
 
      こんなお話があったのです。
 
 
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         実は、その後知ったのですが、 海軍兵学校の正面玄関のような、 船着き場で、
 
 
        少し、エサのような、まきエビのような物を、 海面に少し撒きますと、上から見て
 
        いると、下から、そう、体長が10センチ程度でしょうか、大きな口を広げてプカプカと
 
        泳いで来まして、釣り糸をたれますと、釣り堀のような感じで、よく釣れるのですが、 
 
        恐れ多くも、海軍兵学校の正面玄関で、そんなことは出来ませんが、 この時期に
 
        なると、この界隈では、当時はよく釣れる魚でありました。
 
 
 
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      どのようにするかというと、 出刃包丁で、両面のうろこをきれいに取りまして、腹を
 
     一文字にすっと切って、 出刃のはばき元で、 えぐるようにして、内臓を出して、
 
    さっと洗浄します。
 
    昆布でだし汁を作って、 醤油、みりん、ショウガの刻んだ物を入れて、汁を作り、 その中に
 
    メバルや、豆腐、ネギなどを入れて、 コトコト煮込むのです。
 
    刺身も美味しいのですが、 この煮付けもなかなか美味しい物でして、 みなさんも
 
    機会がありましたら、 楽しんで見ていただくとよいと思います。
 
    私も、日曜日に、色々データーをとって見たのですが、 砂地の砂浜では、釣れません
 
    で、 どちらかというと、 岩がごつごつしているような、海岸の少し出たところの沿岸で
 
 
 
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    しょうか、 魚というのは、 潮の満ち引きの動きがあるときでないと、不思議と釣れない
 
    もので、 午前中、 当地は、朝方から、満ち潮と言って、 水位が上昇してきます。
 
    この朝の早朝より、潮が上がって行く時間帯がチャンスですが、 服装検査などで
 
    大概時間が間に合いません。
 
    昼の11時前後に、満潮になるのですが、 その後13時程度まで、まったく釣れなくな
 
    ります。
 
    そして、14時から、 今度は引き潮と言って、 水位が下がっていくのですが、
 
    17時から18時にかけて、 潮が引いていくわけです。
 
    引いて行く、過程で、また不思議なことに、 魚が釣れるのです。 
 
 
 
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        こう言う事は、地元の小僧か、 おばさんに、聞くのが1番手っ取り早いことでして、
 
        上手に休日を利用しますと、 また紹介して行きますが、 兵学校の食堂では食べ
 
        れない珍味を味わえるわけです。
 
        当時、私は葛城の山村の出でしたので、 魚はあまり食べたことが無かったのですが、
 
        いやはや、 食べて見ますと、美味しい物でして、 同期の生徒と、 内緒で楽しんで
 
        いたのです。
 
 
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         生徒倶楽部の縁側で、本を見て楽しんでいると、 ぷーーんと、よい匂いが
 
         してきまして、 醤油とショウガの煮込むにおいです、 なんともよい匂いでして、
 
         しばらくしますと、 生徒倶楽部のおばさんが、「 みなさん、できましたけぇ。」と、
 
         わきとりに入れて、【おぼんのこと】私たちのほうに運んでこられまして、みんな
 
         嬉しく喜んだのを覚えています。
 
         「  そろそろ、竹藪に、タケノコが出る季節じゃけぇね、 少し頂き物があったので、
 
         一緒に煮てみましたけぇ。」と、 みんなの前に、 魚が出されたのです。
 
 
 
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          また、タケノコが、コリコリして、 醤油の汁と調和しまして、なんともよい味で
 
          ありました。
 
          私達は、日ごろの海軍兵学校のつらい日常を忘れて、 魚の煮付けに
 
          舌鼓をうったのでした。
 
 
 
 
【次回に続く。】