第978回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
「 番号、 1、 2、 3、ーーーーーーーーーー。」と、点呼をしまして、監事附殿が、
「 これより、炊事と、幕営の設営にあたる。」 「 偶数番号は、 炊事の作業、 奇数番号は、
幕営の設営作業、 奇数番号は、 右に集合、 偶数番号は、左に集合せよ。」と、
こんな呼びかけでありまして、私達は、整列し直したのです。
陸軍はどうか知りませんが、 海軍ではよく点呼をして、 本人の能力の事など考えず、
偶数番号と、奇数番号で、 人員兵力を別けて、物事にあたることが多かったのです。
ちょうど、その時刻、 すずしい朝方から、 太陽が照りつけまして、ずいぶん暑くなって
きたのですが、私達奇数番号の生徒は、なぜか、スコップを持たされまして、幕営の場所の
整地をさせられることになったのです。
海軍の幕営というのは、 戦後で言えば、 大型のテント、つまり、 みなさんの学校の運動会
で使用している、白い4本支柱の大型のテントがあると思いますが、そんな感じの、
やや、大型の物で、 四方がすべて覆いが付いていたのです。
「 全員 注目。」 と、 監事附殿が、私達に注意事項の説明を始められたのです。
「 幕営を作る場所は、よく考えて作らなければならん、 同じ砂浜でも、夜間、寝ていて、
潮が満ちて、波が押し寄せるような場所ではいかん。 それから、 雨が降って、
幕営の中が、水が入ってくるような事でも困る。
よいかな、 砂浜というのは、総じて、 海に向かって、傾斜しておる、 傾斜しておる
場所に、 幕営を張ると、 どうなるかーー、 おい、 貴様 どうなるか、解答せよ。」
と、 私に指名して、 解答を求められたので、「 はぃ、 斜めな傾斜地に幕営を建てますと、
地形に平行して、 斜めになってしまいます。
結論として、 地面を整地しまして、 周囲を溝を作り、排水の事を考えて、整地を
したのち、地面の水平と、周囲の排水を確認した後、 幕営を設営せしめるのが、
得策と考えます。」と、 解答すると、
監事附殿は、「 よし、 模範解答である。」 と、言われますと、私達に、「 おい、こうしろ。」
「 貴様は、こうしろ。」と、 指示を出されまして、 砂浜の整地が行われ、 幕の穴に、支柱の
支柱を通して、 準備をすると監事附殿が、「 ロープ引っ張れ、 支柱たてらせ。」と、
号令をかけると、 幕営が張られていったのです。
そして、 かけや【 かけやというのは、 大きな木製のハンマーのような物 】で、
木杭を砂浜に打ち込みまして、 そこに、ロープを引っ張って、括りつけて行ったのです。
すると、 監事附殿が「 だれかっ、 こんな結び方をしておるのは。」と、怒り出されたのでした。
【次回に続く。】