第1074回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第1073話  鳳翔への二度目の着艦実験の事。  2015年1月30日金曜日の投稿です。









          大正12年3月5日の午後、 神奈川県 横須賀市猿島沖合にて、その日


         二度目の艦載機による着艦実験が行われたのです。




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         操縦幹を握るのは、 午前中の実験で、飛行甲板をオーバーラーンして、海中に


         着水して救助された、 吉良 俊一海軍大尉 殿でありました。




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          鳳翔は、事前の打ち合わせの通り、風上に向かって、 全力航行し、23ノット


          前後を保ちながら、東京湾を南下し、 左右斜め後方には、救助艦艇として


          2隻の水雷艇が並走していました。


          吉良 俊一 海軍大尉の操縦する、 10式艦上戦闘機は、 爆音を響かせて


          鳳翔の上空を旋回し、 2回、 着艦コースに進入し、 再び、スロットルを全開にして


          急上昇して、 飛び去り、 3回目のアプローチで、 着艦を試みたのです。






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         「  6時の方向、 航空機、 進入、 距離、5千メートル。」 と、見張り台の見張り員が


         愚直に、大声で叫ぶと、 鳳翔の飛行甲板の下の操舵室では、 緊張に包まれたのです。





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           操舵室では、 艦長の 豊島 二郎 海軍大佐が、「 両舷、全速、黒3回転。」と


          命令を発令すると、 伝声管から、次々と、指示が繰り返されて、機関室に

          命令が伝達され、  鳳翔は、全速力で、航行したのです。



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              機関室では、重油がどんどん焚かれ、 タービンはフル回転の状態でした。



             吉良 機は、  海面から一定の高度を保って、低空で鳳翔の艦尾に

             アプローチして、 機体の水平を保ちながら、徐々にスロットルを搾って

             速度を落とし、 失速すれすれまで、発動機の回転を落とした後、





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             ふわりと、 落ちるような感じで、 飛行甲板に降り立ち、 みんなが手に汗


             を握って、 見つめていたのですが、「 ガァーーーーーーーーンッーーー。」


             と、爆音を響かせながら、 そのまま飛行甲板をあっという間に通り過ぎて、


             鳳翔の艦首で、やっと,停止したのです。





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           飛行甲板の左右のベランダで、 注視していた士官や、下士官、水兵は、


           みんな、我が事のように大喜びして、 日本人による、初めての洋上での


           艦船の飛行甲板への着艦は、やっと成功したのです。




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            左右の後方を航行していた、水雷艇の乗組員も、 午前中同様、 また


            救助を想定して、 緊張していたのですが、 みんな、 吉良 大尉が、 


            なんとか、飛行甲板の上で、艦載機が停止したので、 帽子をふって、歓声を


            上げたのでした。


            日本で、初めての 艦載機による、洋上を航行中の艦船への着艦は、


            失敗や、事故を経て、 無事完遂されたのですが、 おおおくのデーターから

            鳳翔が、 改良するところが、多々見つかるという結果となっていったのです。

         


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            つまり、 致命的な、欠陥として上げられたのが、 飛行甲板の形状でありました。


             この飛行甲板の形状は、イギリス人技師の フレディリック ラットラントッ 技師に

 
             よって、考案されたのですが、 艦尾から、 艦首に向かって、すぼむように







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           飛行甲板の幅が 22メートルから10メートル程度と、 幅が狭くなっているので


             着艦の時に、 非常に狭く見えて、 パイロットに圧迫感を与えるという

           

             事とともに、 右舷に突き出ている、 飛行監視塔が、飛行甲板の形状も


             あるのですが、  着艦時に衝突しそうな、圧迫感を与えるという そういう



             報告が上げられたのです。






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          そして、飛行甲板が、艦首が、 傾斜して、下にスロープになっているのは


          不適当と判断され、 この部分を改装するように提言がまとめられ、報告書が


          海軍省に提出されたのです。



          世界で初めての 飛行甲板を持った、特務艦 鳳翔 【ほうしょう】は、 就役して


          数ヶ月で、大規模な改造工事を受けることとなっていったのです。




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          イギリス人と、日本海軍が、世界で初めての試みと称して、横須賀沖合で


          実験を繰り返していた頃、地球の反対側の大西洋では、 アメリカ海軍によって、


          同様な試みが行われていたのです。 






          【次回に続く。】