第41回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第40話 授業中の出来事。 2012年3月19日月曜日投稿
 
その年の、10月の中旬であったか、中学の授業中、それぞれの進路について、先生から話しがあった。
 
当時は、ほとんどが、家業を継いだり、大阪や、京都に働きに出る生徒がほとんどであった。
 
ほんのわずかの一握りが、各地の帝大、医大などを希望する、家の裕福な生徒もいた。
 
それぞれの志望の進路を小さなざら紙に記入して、提出するようにと、みんなに話しがあり、自分にも、前の席
 
の生徒から、紙がまわってきて、後の生徒に渡した。
 
海軍兵学校とか、書いて、試験に落ちたら、恥ずかしいので、書くのをためらったのであるが、紙に、【海軍兵学
 
校熱望、淵田美津雄】と、記入して、恥ずかしいので、四つ折りにして、見えないように提出した。
 
実は、これが失敗だった、先生が、「だれかいなー、1人だけ、ちいさく折って出しとるのは。」といって、紙を広げ
 
て、又、大きな声で、「淵田美津雄、海軍兵学校。」と言うものだから、みんなが、「おーー、たこが、兵学校を受
 
験するんだと、へー、合格するんかいなー。」と言って、みんなからからかわれて、赤くなってしまい。
 
「うおー、たこが、ゆでだこになってもうた。」と物笑いになったのであった。
 
先生が、「あー、静かに、静かに、国のために軍人になるのは、非常に立派なことである。みんなも、いずれ、
 
男子の場合は、徴兵検査を受けて、合格した物は、陸軍なり、海軍なりに入って、国を守ってもらわなければな
 
らん、もし、淵田君が、難易度の高い、海軍兵学校に合格したら、畝傍中学としても、名誉なことである、淵田
  
君、がんばるように。」と話しはしてくれたものの、みんなに知れ渡ってしまい、合う人、合う人が、「兵学校受
 
験、がんばっれよ。」と声をかけられるので、逆に、こころの重圧となり、自分を苦しめたのであった。
 
【次回に続く。】