第42回 昭和の伝道師 【戦中、戦後のパイロットの物語】

第41話 中学の成績表 2012年3月20日 火曜日投稿
 
大正8年の12月に、畝傍中学の終業式の前日であったか、成績考課表の配布が各自にあった。
 
こっそり、開けて見ると、全部 甲であった。
 
戦前の評価は、甲、乙、丙の評価で、表されていたのであるが、すべての科目を甲で、そろえられて安心した。
 
冬休み中も、受験勉強をして、なんとか、来年の海軍兵学校の試験には、合格したいものだと考えていた。
 
厠に行って、教室に戻ってみると、堀内のやつ、人の成績考課表を、勝手に開けて、みんなで見ていやがる、
 
「こらー、堀、かえせー。」と、怒ると、「おい、鼻を中心として、目と目の間隔が広くて、目が横についていて、おで
 
こが広くて、後頭部の大きい人間の脳みそは、発達しとるのかのー、みんなー、たこのやつ、全部 甲やどー。」
 
と言って人の考課表を持って逃げおって、あとから追いかけて、捕まえるのに大変であった。
 
家に戻って、母親のシカに成績表を渡すと、「まあー、美津雄ようがんばったねー、うちは、あんたに医大に、
 
進んでもらって、医者になってほしいんよ。」という、「ひとの為に、尽くして、私が体が弱いんで、美津雄が
 
医者になってくれたら、あんしんなんよー。」というので、困ってしまったのであった。
 
【次回に続く。】