第79回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語。】

第78話  人生の雷鳴                               2012年4月26日 木曜日投稿。
 
英語の試験の5問の問題のうち、はじめの問題は、単語を回答する問題であった。
 
よく見ると、問題集に出ていた問題と同じで、戦艦を英語に直すと単語で回答せよ。
 
とかいう問題で、海軍の問題らしい問題であった。
 
2問目、3問目、4問目は、回答は、【   】の中に、記入して回答せよ。という虫食い問題で、これも難なく出来た
 
のであった。
 
海軍兵学校の英語の問題集を事前に、反復練習しておけば、回答が出来る問題で、一安心である。
 
さて、5問目が問題であった。
 
少し長い、英文が書いてあり、これを的確に和訳、回答せよ。と書いてある。
 
全体の文章から、話しのあらすじは、2人の人物の打ち合わせの会話と、だいたいわかるのであるが、問題
 
は、この長文の中に、自分の知らない、意味のわからない複数の単語があったのであった。
 
まずいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
 
英語の単語だけは、意味を覚えとかないと、回答不能である。
 
時間ぎりぎりまで、考えて、意味がつながるように、日本語で記入したのであるが、ふと、右の机の生徒に、
 
目をやると、こちらも考えて鉛筆が進まないようであった。
 
前の席の生徒が、起立して、答案を出して、会場から姿を消した。
 
右斜め前の生徒も、起立して、答案を提出して、外に出て行った。
 
我々2名が、「はーーーーーっ。」とため息をついて、ジッと考えていた。
 
海軍士官の顔を見ると、猛犬のようなまなざしで、我々を見ている。
 
そうこうしているうちに、時間切れとなり、答案を提出した。
 
講堂から、外に出て、英語の単語をもう少し覚えとけば、こんな事には、と後悔したのであった。
 
その当時の自分は、虫食いの問題は解けて、日本語を単語に直したり、 短い英文を和訳したりは、出来たので
 
あるが、試験問題は、2名の話し言葉による、日常の会話であったのだと思う。
 
問題が解けても、会話が出来ないのであれば、使い物にならないわけで、実践主義の海軍らしい問題であった。
 
しばらくして、合否の掲示があった。
 
2名合格で、自分の86の番号ともう1人の121の番号には、朱墨が一文字にひいてあった。
 
不合格である。
 
この数年、海軍兵学校一筋でやってきただけに、全身から力が抜けて、その場に座り込んでしまったのであっ
 
た。
 
【次回に続く。】