第196回  昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第195話  見敵必戦主義の事                      2012年8月23日 木曜日投稿
 
 平本中尉は、数人の口頭試験の予行をすると、「全員、前を向け。」と指示をして、素早くイスと机を、元に並べ直
 
すと、革靴の音を、コトン、コトンと、ならしながら、机の間を通過して、教卓に戻った。
 
そして、「全員に問うが、重森生徒が、解答できなかった問を、解答出来る者はおるか。」と、問われたので、源田
 
實は、手を上げたのであった。
 
 平本中尉は、「よし、貴様、答えてみろ。」と、許可が下りたので、「大英帝国海軍の精神主義は、見敵必戦主義
 
であります。」と、発言したのであった。
 
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すると平本中尉は、「よろしい。」と言って、 黒板に「見敵必戦」と大きく書いて、「みんな良く聞け、この文字の意味は、
 
少数の兵力であっても、大部隊の敵を発見したら、必ず攻撃すると言う意味合いの事である、よく覚えとくように。」と、
 
大きな声で、指導したのであった。
 
 続いて、「後藤生徒の解答が出来なかった事について、解答出来る者は。」と、質問があったので、又手を上げた
 
のであった。
 
 「良し、また、貴様いってみろ。」と、許可が出たので、「T字戦法であります。」と、解答した。
 
 平本中尉は、「貴様、口頭試験の態度と言い、今回のことと言い、大変良い。」と、賛辞をいただいたのであった。
 
平本中尉は、黒板に真横の線を2本描いたのであった。
 
 「良いか、対馬海峡を通過した、ロシアのバルチック艦隊は、艦隊を2列、縦従陣という陣形で、北上してきた、
 
我が、大日本帝国海軍は、左前方から、1列で、縦従陣でロシア艦隊に接近、手前で、大きく90度に、回頭変針
 
をして、今度は、真横にロシア艦隊を遮るように、進みながら、攻撃した。
 
 すると、アルファベットのTの字のような、航跡の事から、T字戦法と呼ばれておる。
 
このような攻撃方法の短所と長所を述べられる者はおるか。」と、平本中尉から問いかけがあったので、井上生徒が、
 
手を上げた、「良し、貴様、答えてみよ。」と、平本中尉が指示すると。井上生徒は、「ロシア艦隊は、艦についている、
 
 
前方の砲しか、発砲できませんし、前方の艦は、戦闘できますが、後方の艦は、砲撃できません、これでは、火力
 
不足になります。 又、それに対して、我が方は、右側面を、敵に対しているので、前、後と右の艦砲が、使用出来、
 
横1列のため、全部の艦が、砲撃でき、ロシア艦隊に、攻撃できたのであります。」というと、平本中尉が、「よろしい、
 
短所はどういう部分か。」と、問うと、「自分はよくわかりません。」と返事をしたのであった。
 
平本中尉は、「良し、貴様座れ。」と、指示を出すと、「この戦法は、一見、側面から、敵を遮断し、右舷に火砲を
 
集中できるのであるが、敵に側面をさらすため、魚雷攻撃に、弱いという、弱点がある。
 
 
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 そして、平本中尉は、黒板に何かを書き出した、近年魚雷というのが、開発されており、発射すると水中を
 
進んで、艦の喫水線の下に命中すると、爆発する、 その後は、ここから進水して、沈没してしまう、
 
 この場合、砲撃をジグザグ回避運動取りながら、魚雷の射程距離、2000メートルに近づくと、水雷艇で、魚雷を
 
放つ、こちらの戦艦は、横腹を、さらけ出しているので、良い標的である。
 
 魚雷を発射したら、そのまま、反転して、高速離脱する。
 
 右に、左にと、高速で移動する目標は、射撃してみてわかるのであるが、なかなか、砲弾が当たらん。
 
 このような事から、どんな戦法も、長所、短所があるわけだ、わかったか。」と、生徒に向かって平本中尉が言うと
 
全員「わかりました。」と、大きな返事をしたのであった。
 
 【次回に続く。】