第506回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】
第505話 海軍兵学校 ボーライン ノット結びの事。 2013年7月11日 木曜日の投稿です。
井上君は、コブ結びをして、「 申告いたします。 出来ました。」と、申告すると、 分隊監事殿が、
「 全員、よく見ておけ、これをくそ結びという。」 分隊監事殿は、 めいいっぱい、これ以上できな
いくらい、綱を引っ張ると、「 いいか、井上生徒、こいつを、ほどいてみろ。」と指示を出し、井上君は、
カチカチに固まった、綱をほどけなかったのであった。
「 井上生徒は、列に戻れ。」と、指示を出すと、今度は、 船着き場の、ロープをかける場所を指指して、
「この中で、これの呼び方がわかるものは、挙手せよ。」と、聞かれたのであるが、みんな、
しーーんとして、だれも、手を上げなかったのである。
分隊監事殿は、しばらくすると、「 これは、もやいぐい と言う。よく覚えておくように。」
と、話があり、さらに続けて、「 よいか、短艇の訓練も大切であるが、船乗りになるには、
始めに、綱の結び方を覚えなくてはならん。 そこで、下士官殿に見本を見せてもらう。」
と言うと、「 おーーーうーー。」と、合図すると、分隊監事附きの曹 長殿が、 なにやら
独特の結び方で、綱をむすんでいき、 あっという間に出来上がると、今度は、
分隊監事殿が、「よし、ほどいて見せろ。」と、指示を出すと、 引っ張ると、あっという間に
ほどけてしまったのであった。
分隊監事殿が、「 だれか、この結び方の名称をいえる物はおるか。」と、私達に、聞かれたの
であるが、誰も返事が出来ず、 しーんとしてしまったのであった。
しばらくすると、 この結び方は、イギリスで使われていて、我が海軍でも採用されて、常時
行われておる、 名称を ボーライン ノット 【 bowlIne knoT 】 結びと言う、いいか、
貴様、言って見ろ。」と、 岐阜県の川本彰君を、指指すと、「ボーインーーー。」と、言うと、
分隊監事殿は、「違う、 いいか、覚え方は、 ぼうさんのラインは、○ノットと、覚えておくように。」
「 よし、今から、ボーライン ノット 結びの実習を行う、全員、等間隔に開けーーー。」と、
号令がかかり、私達は、列を広がって、実習することになったのであるが、昨日の夕方より、
何も食べて無かったので、お腹がすいて、仕方がなかったのであった。
【次回に続く。】