第513回 昭和の伝道師【戦中、戦後のパイロットの物語】

第512話  海軍兵学校 犠牲的の精神の事。      2013年7月18日木曜日の投稿です。
 
 
 
 
 
   続けて海軍大尉は、 私達に問いただしたのであった。
 
 
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       「  犠牲的精神とは何か、 よし、貴様、 解答してみろ。」 と、ある生徒を指名すると、
 
       彼は、起立をすると、 「 おのれの身を捨てて、大日本帝国に、殉じることであります。」
 
       と、解答したのであった。
 
 
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           すると、 「 おーーう、なかなか貴様は、筋がよいぞ。」と、上機嫌になり、
 
           私達に、このように説明したのであった。
 
           敵と相対した時に、おのれの身を守ろうとする心が、三分の一でもあれば、
 
           人間、どうしても、防御がちになり、攻撃に腰が入らない物である。
 
           つまり、へっぴり腰になるのである。
 
           すなわち、 そのような、防御的考えを捨て、 おまえ達は、大日本帝国に、命を捧げ、
 
           栄誉ある、皇軍兵士となったのである。
 
           
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          敵と、相対した時は、自らの命を捨てて、敵とあい対し、 そして、虚突猛進、
 
          敵に向かって、突進、突進、突進、 肉弾となって、敵に体当たりをして、敵を
 
          粉砕撃破する。 
 
          その際、苦しいとか、つらいとか、痛いというのは、 防御的考えが残っているので、
 
          感じるのであって、初めから、御国のために、命を捨てて、敵にぶち当たっていく。
 
           そうすると、痛み、苦しみなどは、感じないのである。
 
 
           そういう、心がけが戦場では、大変重要である。
 
         
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       全員よいか、 これより、 今日話した、攻撃精神、 犠牲的精神をこれより、全員で
 
       唱和する。
 
 
       「 攻撃的精神とは何かーーー。」   すると私達は、大声で、「攻撃的精神とは何かーー。」
 
       「 犠牲的精神とは何かーー。」    またまた私達は、大声で「 犠牲的精神とは何かーー。」
 
 
      と、繰り返し、 唱和して、頭にたたき込まれたのであった。 
 
 
 
 
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            【日本軍の飛行機の表面は、0,5ミリの薄いジュラルミンが貼ってあるだけであった。
 
             反面、機体が軽く、運動性能は抜群であったが、翼の燃料タンクに一発でも、命中
 
             すると、すぐライターのように火がついて、 火達磨になって墜落した。】
 
 
       これらの、精神的教育を、数年間欠かさず毎日教育され、防御することを、卑怯者、臆病者
 
       呼ばわりし、 これらのことが、たとえば、兵器にしても、 防御装甲板などは、薄い板1枚で、
 
       紙くずのように打ち抜かれて、多くのパイロットが戦死していき、 反面、アメリカはどうかと
 
       いうと、こちらが命を捨てて、ぶち当たり、撃っても撃っても、防弾装甲が施してあり、
 
       なかなか、貫通せず、 火を噴かないわけである。
 
       大東亜戦争の敗因のひとつは、この海軍の科学を忘れた、精神的教育に原因が
 
       あったと、言わざるをえないのである。
 
 
【次回に続く。】